散歩道<3309> 
                          
                    社説・地球文明・低リスク型へかじ切る年に(2)                  (1)〜(3)続く

政治意思という資源

 幸い、未来は過去の延長にしかないわけではない。新たな繁栄の希求へ、今年を転機にできるかもしれない。ふし目の国際会議が開かれるからだ。
 地球温暖化については、国連気候変動枠組み条約の第16回締約国会議(COP16)が11月末にメキシコである。
 化石エネルギーの大量消費で温暖化が進めば、水不足が頻発し、穀物生産は減少する。生物種の4割以上が絶滅し、感染症が爆発的に広がる恐れもある。何とか、産業革命前からの気温上昇を2度以内にして打撃を抑えたい。COP交渉はそこを目指している。
 「これは小説ではなく、科学だ。このままでは、気候変動が私たちの安全保障や経済、地球に受け入れ難いリスクを突きつける」。オバマ大統領が昨年12月のCOP15でそう協調したのも「2度以内に」との思いがあったからだろう。
 だが、「今後のエネルギー消費が伸びる中印など新興国や途上国の行動が大事」と迫る先進諸国と、経済成長の足かせになることを警戒する新興国・途上国との対立は根深い。
 COP15は一時、決裂寸前まで緊迫したが、オバマ大統領や欧州諸国の首脳らの外交努力で「2度以内に」を再確認するコペンハーゲン合意がまとまった。拘束力のある新たな国際枠組みへの課題だが、首脳外交で世界を変えられることを示したのは重要な一歩だった。
 アル・ゴア氏は2007年、ノーベル平和賞の記念平和講演を「(温暖化対策で行動する)政治的意思は、再生可能な資源である」と締めくくった。地球環境が有限なことに気づいた今、この再生可能資源を最大限に生かしたい。


'10.1.3.朝日新聞