散歩道<3278>

                    opinion耕論デフレとどう戦うか 成長戦略なしに脱却はない(4)                 (1)〜(4)続く

 いま日本経済の基礎体温は最低の水準にある。下方硬直性があってなかなか下げられないといわれる賃金に、手をつける動きまで現れている。日本経済はここ20年停滞を続けていたが、衰退の坂を転げ落ちようとする瀬戸際まで来ているのではないかと思うことさえある。
 それに歯止めをかけようと考えたときに出てくるのは、一層の金融緩和という発想ではないだろう。金融緩和には症状を少し抑える効果は確かにあるが、対処療法に過ぎない。日本経済が追い詰められたのは、一時しのぎを繰り返してきた結果だ。ここでまた、さらに一時しのぎをというのだろうか。
 労働人口が減っている分を、労働生産性で補わない限り、経済成長はない。実質2%くらいの成長を実現していかないと、日本が抱える問題を克服する絵は描けない。サービス産業や1次産業など、米国に比べて半分とか10分の1程度の労働生産性しかない産業分野が、日本には山のようにある、これを引き上げるのは、難しいが、不可能なことではない。
 しがらみや既得権益を解きほぐして労働生産性を上昇させるには、戦略的なプランが必要だろう。一連の政策をひと続きのものとして取り組めば、一つの政策では不利益を被る人たちを最終的な結果について納得させることができる。最終結果が出るまで人々を待たせるには、政治への信望が必要だ。その信望を自民党政権は失っていた。現政権は国民の信望があるうちに、戦略的プランを打ち出さなければならないが、中期的な計画はいっこう出てこない。
 それは今日に始まったことではない。日本の政治は利害調整を怠り、ツケをマクロ経済政策に回して金融緩和と赤字財政を常態化した。その結果が日本経済の現状なのだと痛感する。


'09.11.29.朝日新聞・慶応大学教授・池尾 和人氏

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