散歩道<3272>             
                    ザ・コラム・2010年の経済政策  新しい産業 環境軸に創出を(1)                (1)〜(3)続く

 日本経済が直面する課題は複雑多岐にわたっている。
 円高が急速に進み、輸出産業は打撃を受けている。輸出が減る中で内需は盛り上がらず、デフレ(物価の下落)が悪化している。景気対策のためには大規模な財政出動が必要となる一方、政府は巨額の借金を抱え、税収も大きく落ち込んでいる。
 世界経済を見ても、米国経済の回復は弱々しく、米国の需要がこれまでのように高成長するとは期待できない。代わって世界経済の成長を引っ張るのは新興国と期待されているが、この市場を日米が奪い合う構図になりつつある。
 こうした中、円高とデフレへの対策として金融政策や財政政策への期待が高まっている。
 日本銀行は金融緩和の姿勢を明確にし、量的緩和に近い政策を打ち出した。短期的には、日銀がデフレと闘う姿勢が明確になったので、市場に一定の安心感を与える材料になったのかもしれない。逆に、もっと政策のタイミングや大きさに改善の余地があったといえるかも知れない。しかし、現在の日本経済の置かれた状況では、しょせん金融政策でできることには限界があるのではないだろうか。
 3ヶ月ものなどの長期金利が下がれば企業の資金繰りが多少の効果はあるだろう。しかし、需要と供給の巨大なギャップを埋める即効性はない。多くの企業は資金繰りで困っているのではなく、輸出が減って、売上げが落ちて困っているからだ。
 金融政策が即座に効果を発揮するとしたら、為替が円安になって、輸出が大きく増えることによってであろう。しかし金融緩和で円安に誘導しようとしても、簡単ではない。米国も金融緩和を続けており、新興国などへの輸出を増やしたいという思惑から、徐々にドル安円高の方向を目指しているからである。日本が円安を目指せば、米国経済の利害と真っ向から衝突する。安保問題も含め、日米関係の微妙な現状を考えても、日本は米国と前面対決してまで円安誘導するという選択はできないだろう。すると、金融政策が日本の景気回復に与える影響はかなり限定されることになる。

'09.12.11朝日新聞 経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏

<検>氏名・小林 慶一郎氏567、1187、デイベート経済1251、1463、1753、1758、1907、けいざいノート1938、2160、2228、2589、2676、2713、2773、<2948>ザ・コラム市場と共同体(1)〜(3)、<3015>ザ・コラム財政政策(1)〜(3)、<3036>ザ・コラム文化戦略(1)〜(3)<2873>ザ・コラム銀行国有化、<2662>クルーグマン氏・大不況克服へ巨額財政出動せよ(1)〜(4)<3128>ザ・コラム・国際金融規制(3)<3162>ザ・コラム・新政権の政策理念(1)〜(3)<3206>ザ・コラム・G20は近隣窮乏化防げるか(1)〜(3)