散歩道<3268>
                       社説・15.7%の衝撃・貧困率が映す日本の危機(3)         (1)〜(3)続く         世相(148)でもある

人生前半の社会保障
 貧困率を押し下げるには、社会保障と雇用制度を根本から再設計することが必須である。それには「人生前半の社会保障」という視点が欠かせない。  能力も意欲もあるのに働き口がない。いくら転職しても非正規雇用から抜け出せない。就労可能年齢で貧困の落とし穴にはまった人たちを再び人生の舞台に上げるには、ただ落下を食い止めるネット型ではなく、再び上昇を可能にするトランポリン型の制度でなければならない。就労支援のみではなく、生活援助のみでもない、両者の連携こそが力となる。
 働ける人への所得保障は福祉依存を助長するという考えも根強いが、仕事を見つけ、生活を軌道に乗せる間に必要な生活費を援助しなければ、貧困への再落下を防ぐことはできない。
 新たな貧困を生まない雇用のあり方を考えることも必要だ。企業が人間を使い捨てる姿勢を改めなければ、国全体の労働力の劣化や需要の減退を招く。正規、非正規というまるで身分制のような仕組みをなくすためには、同一労働同一賃金にやワークシェアリングの考え方を取り入れなければならない。正社員の側も、給与が下がる痛みを引き受ける覚悟がいる。

新しいつながりを
 経済的な貧困は、人を社会の網の目から排除し孤立させる。家族、友人、地域、会社などから切り離され、生きる意欲すら失っていく。
 戦後の成長期に築かれた日本型共同体がやせ細る今、貧困を生み出さない社会を編み上げるには、人を受け入れ、能力を十全に発揮させる人間関係も必要だ。新たな人のつながりを手探りしていくしかない。その姿はまだおぼろげにしか見えないが、ボランティアやNPO、社会的企業などがひとつの手がかりとなるだろう。
 鳩山由紀夫首相は所信表明で、「人と人が支えあい、役に立ち合う『新しい公共』」を目指すと語った。この美しい言葉を、現実の形にしていく政治力を発揮できるだろうか。
 同時に貧困対策は、自民党などの野党にとっても共通の国家的課題だ。与野党が真剣に斬新な知恵を競いあって欲しい。危機は待ってくれない。


'09.11.4.朝日新聞

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