散歩道<3267>
社説・15.7%の衝撃・貧困率が映す日本の危機(2) (1)〜(3)続く
数値公表の持つ意味
新政権が貧困率を発表したことには、現実を直視すること以上の大きな意味がある。英国などのように、具体的な数値目標を設定して貧困率対策に取り組み事ができるからだ。たとえば、「5年以内に貧困率の半減を目指す」といった目標である。
貧困の病根は何か。そして貧困は何をもたらそうとしているのか。
経済のグローバル化により国際的な企業競争が激化し、先進各国で雇用の不安定化が進んだのは90年代半ばからだった。日本では労働力の非正社員化が進み、当時の自民党政権も政策で後押しした結果、3人に1人が非正規雇用という時代が到来した。
日本企業は従来、従業員と家族の生活を丸ごと抱え、医療、年金、雇用保険をセットで支えていたため、非正規雇用の増加は、それを一度に失う人を大量に生んだ。一方、生活保護は病気や高齢で生活手段を失った人の救済を想定していた。働き盛りの失職者らは、どの安全網にも引っかからずこぼれ落ちていった。
貧困率の上昇は、安易に非正規労働に頼った企業と、時代にそぐわない福祉制度を放置した政府の「共犯関係」がもたらしたものだといえる。
日本社会は、中流がやせ細り貧困層が膨らむ「ひょうたん形」にかわりつつある。中流層の減少は国家の活力をそぎ、市民社会の足元を掘り崩す。自殺、孤独死、児童虐待、少子化などの問題にも貧困が影を落としている。
更に深刻なのは、貧困が若年層を直撃していることだ。次世代への貧困の広がりは、本人の将来を奪うばかりではなく、税や社会保障制度の担い手層を細らせる。子育て適齢期の低収入は、まっとうな教育を受ける権利を子供から奪い、将来活躍する人材の芽を摘んで、貧困を再生産する。
これは、国家存立の根を脅かす病である。その意味で貧困対策は決して個人の救済にとどまらない。未来の成長を支える土台作りであり、国民全体のための投資だと考えるべきだ。
'09.11.4.朝日新聞
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