散歩道<3230>
経済気象台(506)・欧州・中東の電力政策
欧州連合は(EU)低酸素経済に向けて再生可能エネルギーによる発電比率引き上げを計画している。中東・北アフリカ(MENA)では石油・天然ガス資源温存と工業化のために長い日照時間を利用した太陽熱発電などが計画されている。
EUは05年に温室効果ガスの排出権取引制度を導入して以来、低酸素化を推進している。07年には新欧州エネルギー政策が発表され、09年には気候変動・エネルギー政策パッケージがEU閣僚理事会で採択された。最終エネルギー消費の20%を再生可能エネルギーとする目標が織り込まれえた。それによる電力供給は、水力発電を除くと20年時点での風力発電比率が54%と過半を占めると予測されている。
中東では、石油・天然ガス資源の温存と、石油化学を中心とした産業育成・インフラ整備に伴う電力需要を賄うため、石炭電力発電、太陽熱・原子力発電などが計画されている。電力を相互融通すべく送電網も整備中で、クエートからサウジアラビア、バーレーンを経由してカタールまでの送電網が09年7月に完成。今後アブダビへの延長が計画されている。
さらに、MENAの気候と地理的有利性を活用した総工費52兆円の太陽熱発電を中心とした大規模事業がEU主導で検討されている。50年を目標に、MENA域内の電力需要を賄うとともに、その一部をEUへ送電し、欧州の電力需要の15%を満たす壮大な計画である。
これが実現すれば欧州のロシアへのエネルギー依存度が低下し、エネルギー安全保障にも資すると見られ、EU・MENAの政治・経済関係が緊密化する。電力をテコにした新たな世界戦略が始まっている。
'09.10.20.朝日新聞