散歩道<3227>
                  パネル討論「資本主義の将来」(1) 金融危機の教訓 生かせ                 (1)〜(3)続く 
                    
リスク移転は幻         
・・・今回の危機で明らかになった。資本主義の一番の矛盾は何か。 
岩井氏 金融問題に矛盾が集約されている。
ジョス氏 金融と実体経済の間には重要な違いがある。金融が誤った方向に行くと、損害になる。お金を借り入れ過ぎ、投資だけに使う。返済できない状態になる。だから金融規制が必要なのだ。
サッセン氏 金融が実体経済に従わず、自己増殖してしまうと、他の分野に影響する。利潤の論理でいけば、貧しい人のことを考えなくてもいいことになる。
・・・では、だれが一番悪いのか。
ジョス氏 誰か一人が悪かったというのではない。お金を貸した側だけでなく、投機目的で借りた方も悪い。規制当局は負債の積み増しを理解できなかった。管理できなかった当局も悪かった。多くの悪者がいる。
岩井氏*1 資本主義や金融が自らリスクをコントロールできると信じてきた政策当局が悪いと思う。資本主義の構造には矛盾があるのに、その構造的な矛盾を無視した人たちが悪い。
・・・資本主義が抱える矛盾は以前からあった。なぜ今、これほど深刻な危機が訪れたのか。
サッセン氏*2 デリバティブによって企業はリスクを移転できるはずだった。自分のリスクはどこかにやってしまったという幻想を持っていた。しかし市場は電子的につながっている。デリバティブをみんなが持っていて、リスクはシフトできていなかった。そこにブーメラン効果、ネットワ−ク効果が起きて全部の企業が影響を受けた。
ジョス氏 これほど金融商品による借り入れがあったことはない。その破綻、暴落で大きな影響が出た。これが一つの原因だ。金融市場の機能が向上して企業は銀行借り入れでなく、社債を発行して資金調達できるようになった。つまり、全体的な信用が銀行から離れていった。市場に比べて銀行が小さくなったので、世界各国の中央銀行が慌ててしまった。この二つがあって、ひどくなった。
岩井氏 ポスト産業資本主義の時代に移り、金融が過剰になった。それが金融革命を生み、投機活動の肥大を招いた。もう一つは、低金利政策だ。グリ−ンスパン氏が米連邦準備制度理事会(FRB)のときに、何度も危機が起こった。そして金融的なバブルは自動的に回復するという立場から、そのたびに利下げした。それを繰り返しているうちにバブルが最大になり、破裂した。

2009.11.4.朝日新聞・パネル討論・東京大学教授・岩井克人氏、米スタンフォード大学院教授・ロバート・ジョス氏 米コロンビア大教授サスキア・サッセン氏

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