散歩道<3223>
経済気象台(505)・オバマの医療保険改革
オバマ大統領の人気が落ち込んできた。理由はいくつかあろうが、やはり彼が進めようとしている公的医療保険改革の国民的な不人気原因の一つであることは間違いない。現在、アメリカでは国民の6分の1にあたる4600万人が無保険であり、あの医療が最も進んだ国で病気になっても満足な治療が受けられない状況にある。国民皆保険は民主党の重要な政治的課題で、かってその創設にヒラリー・クリントン*1氏も挑戦したがあえなく挫折している。今回も、この轍(てつ)を踏みそうな気配である。
賛否は国民の間で二分されているようで、テレビの報道で見る限り反対派の危機意識はかなりのものだ。反対の最大の理由は、この公費での医療保険制度が導入されると1兆j(約90兆円)の財源が必要とされ、将来の増税は不可避と見込まれることにある。アメリカは元来、低福祉低負担を好む国で、国民負担率(租税と社会保険料合計の対国民所得比)は、主要先進国の間で最低水準にある。あの高福祉高負担を掲げる北欧諸国の半分以下である。国民は伝統的に、医療・介護などは個人の責任で政府に依存すべきでないと考えている。
したがって公的保険は政府の介入であり個人の自由の由々しき侵害で、「アメリカが社会主義国になる」とまで極論する反対意見もあるほどだ。
この反対運動をみてアメリカ国民の個人的なエゴをむき出しにした姿勢に、日本人との彼我の差を感じざるを得なかった。日本では、これほどまでの反対は困難であろう。詰まり、日本人は社会的弱者の医療費の面倒を見るのは嫌だ、とまでは言い切れず、到底世論にはなりえないと思った。