散歩道<3210>
                      私の視点・21世紀の東京 (2)           (1)(3)に続く
                       五輪より貧困と環境に目を                

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 五輪開催都市となることは、このような東京の状況を変えるものではない。実際、12年に五輪が開催されるロンドンでは五輪開催に伴う費用のため、ちょっとして財政危機を招いている。ロンドンでは、五輪を契機に中心部に近い荒廃した地域を再生させようとしている。しかし、東京にはそのような地域は存在せず、地域再生は東京にとって大きな利点にすらならなかった。東京都はこうした地域についてロンドンよりもはるかにしっかりした見通しを持ち、組織立った方法で改良し、維持してきた。ニューヨークは長い間、広大な地域をただ放置してきた。
 こうした状況からすれば、リオデジャネイロは東京やシカゴよりも五輪をうまく活用できる。五輪開催は都市の相当部分を再生させ、低所得層の地域によりよいサービスをもたらす機会となりうる。リオは東京やシカゴ、マドリードにはなかった方法で取り組まねばならない多くの課題がある。92年のバルセロナ五輪が大成功を収め、多くの人々にとってもっとも印象的な五輪となったのは、バルセロナ市のかなりの地域が穏やかながら衰退しているのを、当時のパスカル・マラガル市長の指導力の下で、再建する契機として活用したからである。
 東京にとって意味のある大規模なプロジェクトがあるとするならば、それは多くの議論がなされている羽田空港である。カギとなりそうなのは、空港に関連した経済活動、すなわち倉庫や組み立て工場などに使えそうな多くの空間が空港の周囲にあることだろう。それは世界の主な空港で見られるハブ(活動拠点)の新たな形である。成田空港の問題は東京中心部からの距離ではなく、大空港を全く新しい形の経済空間とする、こうした経済活動を広げて発展させることができないことなのだ。羽田周辺の広大な地域をこのように発展させられれば、環境と調和したハブ空港が生まれる可能性もある。

'09.10.29.朝日新聞・米コロンビア大教授・サスキャ・サッセン
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備考A:今政府で議論されている羽田空港、成田空港のハブ空港としての問題に、この指摘は参考にもなる。2009年11月1日
備考B:散歩道<1030>三者三論・五輪なぜ誘致・福岡軸にアジア結び発信(1)〜(2)2009年11月1日