散歩道<3207>
ザ・コラム・G20は近隣窮乏化防げるか(2) (1)〜(3)続く
輸出への誘惑
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過去の金融危機の事例では、危機が起きた国の通貨が下落し、その国から輸出が増えることによって経済が回復したことが多い。スエーデンの99年代の銀行危機でも、迅速な不良債権処理を実施したのと同時に、スエーデンクローナが大きく下がり、輸出が伸びて経済が回復した。日本の00年代の回復も、輸出が伸びたことが大きな要因だった。(輸出増の背景には、不良債権処理が進んだことがあったと筆者は考えているが、異なる見解もある)。
米プリンストン大学のクルーグマン*1教授も、金融危機からの脱出は輸出主導が定石とした上で、今回は地球全体が危機だからこの定石は使えないと指摘した。地球の外に輸出するわけにはいかない。
各国の協調がうまくできなければ、互いに相手に対して輸出を増やそうとして、結局だれも輸出を増やせず、世界経済全体が縮んでいく収縮スパイラルになる。世界経済の現状は、大恐慌の後に、各国が自分だけ輸出を増やそうとして為替を引き下げ競争(すなわち近隣窮乏化政策)を行った状況と、基本的に同じなのである。この悪循環をさけるべきだと各国は総論では合意しているが、今後については予断を許さない。
たとえば、現在、ドル安が進んでおり、今後の長いトレンドとしてドル安が進む懸念がある。金融危機になった米国がドル安によって輸出を増やし(さらに、巨額の対外債務を実質的に帳消しにしてしまい)、外国の犠牲によって経済回復をしようとしているのではないか、という疑心暗鬼がマーケットに存在している。
今回の危機では、欧米や日本には中国経済の内需拡大に期待する声が大きい。9月のG20が常設の会議になり世界経済運営の意思決定機関としての役割を強めつつある背景には、中国やインドなどの内需拡大がなければ、世界経済を発展させられないという共通認識ができているからだ。
09.10.29.朝日新聞・ 経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏
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