散歩道<3175>

                          経済気象台(502)・中小企業の事業継承  

 自己資本比率50%以上、 固定比率100%以下が、一般に優良企業の財務指標といわれる。自己資本は留保利益の合計、他人資本は借入金や買掛金、支払手形といった負債のこと。固定比率100%以下とは、土地・建物、機械設備などの固定資産が、すべて自己資本でまかなわれている状態だ。
 自己資本が厚く、財務が健全な企業は、技術開発や生産合理化への投資を的確にでき、不況にも強い。ただ、非上場の中小企業が、自己資本を増強するには、経営者の報酬を増資に充てるか、税引き後の純利益を留保するしかない。
 経費を節約し、コツコツと利益をあげて納税。配当や役員賞与は支払わず、将来の設備投資に備え、ひたすら留保利益を積み増す。国の補助金などには頼らず、納税や雇用の維持によって国、社会に貢献する。
 ところが、そうやって優良企業になると、オーナー経営者が亡くなり、事業を親族が継承する際、まるで罰金のような相続税を課せられる。一方、業績の悪い企業は、法人税を納税できないばかりか、留保利益が薄いため、大きな相続税も課させない。
 優良企業だからこそ、多額の相続税を払うために金融機関から借金することもある。ときに企業破綻
(はたん)につながる。これが正しい姿だろうか。カナダやスイスなど、相続税を廃止した国は少なくない。日本では、事業継承税制が拡充されてはきたが、依然、高い税率を課している。
 有能な経営者が、相続税対策に時間と労力を取られる現実。これこそ国家的損失ではないか。中小企業の事業継承は、単なる遺産相続ではない。技術や雇用の継承、次世代への伝達である。

'09.10.1朝日新聞