'                                   散歩道<3164> 
                  

                        ザ・コラム・新政権の政策理念(3)                (1)〜(3)続く
                           経済的自由を後退させるな           

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 鳩山政権に国民が求めているのは、こうした点についての方向転換であろう。つまり、国民生活の不安や格差を緩和し、よりきめ細かな質の高い自由主義を政治理念として追求することである。具体的には、生活に直結した医療、福祉、教育、年金などの社会保障を充実し、国民が安心して経済的自由を享受できる環境を整えるという方向である。
 自由主義をさらにもう一段高めるという意味で、新政権に大きな期待があるのは「政治的自由」の拡大である。自民党政治では、政官業の密室の中で利益配分が決められ、普通の国民は政治に参加できていないと感じていた。政治に参加する自由をもっと国民が享受するための手だてとして、官僚依存からの脱却、地方自治の拡大などの政権公約は注目すべきである。「国民に政治を取り戻す」という鳩山内閣のキャッフレーズも、政治的自由という価値の実現を目指すものと解釈できる。
 自由の追求という方向性を政権の基軸として確立すれば、鳩山政権も国民からの高い支持を長期的に維持することになるのではないだろうか。
 懸念すべきは、構造改革路線の弊害(正確には、社会保障削減の弊害というべき)を否定するあまり、経済的自由をも後退させる傾向が連立与党に見られる点だ。
 経済的自由の立場からは、規制緩和などで国民の自由な選択肢を拡大しつつ、社会保障政策を充実して競争弱者を救済する、という方向性が望ましい。たとえば派遣労働者を救うためには、労働者派遣を禁止するのではなく、派遣を認めた上で、派遣労働者の権利の向上や失業対策を充実させることが必要である。派遣禁止は、弱者の就職機会を奪い、結局、弱者を苦しめることになる。
 政治的・経済的自由という価値を基準に、個々の政策案の是非を判断することが、新政権の進路を固める上で重要なステップだと思われる。つまり様々な分野で国民の自由な選択の権利を増やしていくことである。また、弱者救済のための財源が足りないと、代替措置として、自由競争を制限する政策に走りがちになる。新政権の政策理念を確立するためにも、財源の議論は避けるべきではない。

09.9.24朝日新聞・ 経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏

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