'散歩道<3163> 
                  

                        ザ・コラム・新政権の政策理念(2)                (1)〜(3)続く
                           経済的自由を後退させるな           

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  自由は多義的な概念だが、ここでは大胆に「経済的自由」と「政治的自由」に分けて整理する。
 経済的自由主義は、個人や企業の利益追求などの私的活動の自由度を高めることを目的とする。小さな政府や規制緩和による市場競争の促進などの政策を指向する。
 政治的自由主義は政治思想家ハンナ・アーレントによれば、国民が主権者として統治活動や 統治に関する意思決定に参加する自由を高めることを目的とする。地方自治促進、政治への国民参加を増進する政策を指向する。 
 経済的自由主義が個人の利己的行動を自由にしようとする「私的自由」主義だとすれば、政治的自由主義は、政治活動への参加の自由を高めようとする「公的自由」主義ということができる。
 バブル崩壊後の90年代初頭から日米構造協議などでクローズアップされた構造改革は、思想的には、経済的自由を追求する政策路線だった。00年代前半、小泉政権の時期に構造改革路線は国民の圧倒的な支持を受けた。この国民的支持を「小泉マジック」などの政治的パフォーマンスのせいだというのは、あまりにも浅薄で、有権者を愚民扱する議論だ。
 小泉改革が国民に支持された理由は、経済的自由を政治的価値として主体的に追求することを、日本で初めて事実上宣言した政権だったからではないか。このことは、自由の価値が現代の日本においても極めて強い政治的求心力を持っていることを示している。
 個人が市場で経済的自由を追求するため競争に負けたり引退したときの救済策(雇用対策、医療、福祉、年金制度など)の充実が必要だ。ところが実際の小泉構造改革は、社会保障を削りすぎ、市場競争への不安と不満をかきたてた。結果的に、国民生活への配慮に欠けた粗雑な市場万能主義に陥ってしまった。また最近は(自由という価値)への自民党政権のコミットメントもあいまいな形に後退し、旧来の政治の姿に戻ってしまった。

09.9.24朝日新聞・ 経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏

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