散歩道<3156>                          

                       経済気象台(494)・潮目の変化と政権交代

 欧米先進国を除くと、多くの国では「一党独裁」が続いてきた。そうした国の政権交代は、よくクーデターを伴って実行された。日本で初めて本格的といいうる政権交代が、選挙を通じて平和裡に粛々と行われることは当然としても、やはりそれなりの評価ができると思う。
 政権交代によって日本はどのように代わるのか。期待はあるにはあるが、どちらかといえば不安が先に立ち、誰もが固唾
(かたず)をのんで見守っている。
 かって兜町の古老に聞いた話がある。人間の本姓は、元来変化を求めない。しかし、人の日常の行動は少しずつ社会を変え、社会の変化は少しずつ人の行動を変える。そしてある日気がつくと、社会という「海」の潮目が変わっている。変化は「なるようになる」と語っていたことを思い出す。
 実は政権交代が起こる前に、日本社会の潮目がすでに変わり始めていたのではなか。
 日本は戦後長きにわたり最優先の国策として、政官財あげて米国が牽引
(けんいん)する外需主導型の経済を追及してきた。経常収支黒字を恒常化させ、稼いだドルを円に交換せずドル資産を積み上げて、円高を許容しなかった。すなわち、米国が「最後の買い手」の役割を十二分に果たせるように、日本はドルを支え、輸出を拡大してきた。
 ところがリーマン・ショックを契機に大切な輸出が激減し、なかなか元に戻りそうもない。また国政の場で、消費者や生活者の発言が盛り上がってきている。それまではほとんど耳にしなかった視点だ。個人を潤すことに、いつのまにか世の中の関心が向かいつつある。
 新政権がどう動くかに、注目が集まっている。

'09.9.3,朝日新聞