散歩道<3132>

                     広告・異文化への理解と適応力を個人も国も持つべき時代へ(2)          (1)〜(4)続く

世界秩序の変遷を理解し日本型のグローバル戦略を
 キッコーマンの国際化を推進し、海外拠点を拡大していた90年代後半、私が大きな示唆を受けた著作が、アメリカの政治学者マミエル・ハンチントンの『文明の衝突』です。ハンチントンは、冷戦後の国際情勢は超大国のアメリカと、いくつかの地域大国によって構成された「一極・多極世界」へと大きく変化すると指摘しました。そして人々は政治体制の違いではなく、文明・文化の違いによって統合と分裂を進めると説き、まさに今日のような世界の到来を予見しています。
 ことに日本は、地政学的なリスクがこれまで比較的低く、文明の衝突と呼べるような歴史体験がありません。だからこそ私たちは、文明による世界秩序の変遷を知っておくことが必要です。それを理解したうえで、日本型のグローバル社会への適応の道を歩むべきだと思います。
 またグローバリゼーションは、自由化、情報化など新たな価値観をもたらした一方で、希望の見えない社会を生んだともいわれています。自我と誠実に向き合うがゆえに苦悩する人々に勇気を与える本として、姜尚中
*1さんの「悩む力」は非常に意義ある本です。
 姜さんは「『悩む力』にこそ、生きる意味への意志が宿っている」と書かれています。そして悩みを最後まで手放すことなく、悩みを乗越えて真の強さをつかみ取る生き方を提唱しました。私自身はあれこれ悩むタイプではないのですが、この著作がベストセラーになった事実は、日本という社会が置かれている状況を考える上で見逃せないことです。


 '09.9.11.朝日新聞・キッコーマン株代表取締役会長・茂木友三郎氏

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