散歩道<3130>              

                           ザ・コラム国際金融規制(3)                          (1)〜(3)続く
                          
借り手の問題こそ重要だ
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バブルは防止できないが、問題とすべきなのは、むしろバブル崩壊後の不良債権処理を迅速に最小のコストで実施することができるかどうかである。それは日本の経験からの教訓ともいえる。
 筆者の意見では、日本がバブル崩壊後に長期不況に陥った一因は、不良債権処理に時間がかかりすぎた点にある。不良債権処理がもっと早く進んでいたら、90年代以降の日本の不況はもっと早く終わっていたはずだ。不良債権処理が進まなかった要因は様々だが、ひとつの大きな要因は、借り手企業の債務を削減し、再生するための制度的な環境ができていなかったことである。たとえば再生型の倒産手続きや事業再生ビジネスは90年代の日本では発達していなかった。民事再生法が施行され、企業再生を手がけるファンドが日本で活躍し始めたのは、ようやく2000年代に入ってからだ。 借り手をどうするか、すなわち、不良債権をどうやって処理するのか。この難問は欧米の政策論議で中心テーマになっていない。今年3月、ガイトナー米財務長官は100兆円規模の官民共同出資のファンドをつくり、不良債権を買い取って処理する計画を発表していたが、その後、7月にはファンドの規模が4兆円程度に縮小されることになった。金融環境が好転したためというが、政策が後退した感は否めない。欧米の経済学者も、貸し手側の金融機関に対する規制の議論は活発にするが、借り手側(不良債権)の処理についてはほとんど沈黙している。これは90年代の日本の状況と同じである。 今回の危機で問題になった欧米の不良資産は主に住宅ローンの証券商品で、日本の不良債権とは性質が異なる。不良資産が世界中にばらまかれている現状を考えると、民間で処理するのは極めて困難で、各国政府が協調して政策的に処理を促進する必要性が高い。
 たとえば不良資産が国際的に分散していることに関連して、倒産手続きや債務削減の方法について各国の制度を調和させることは大きなテーマである。また、金融危機時には平時よりも債務処理の速度を上げる必要があり、危機時に限って緩やかな条件で債務の株式化や債務免除をできるよう制度を設計しておくことも論点としてあり得る。
 こうした事柄について日本から提起し、「借り手側」への処理、特にグローバルな不良資産処理のための政策の枠組みつくりの論議を始める必要があるのではないか。
 '09.8.20.朝日新聞・経済研究所上席研究員・小林 慶一郎氏
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