散歩道<3123>                
             シンポジューム 「いま『言語力』があぶない  読書は言葉を救えるか」(3)             (1)〜(5)続く

パネル討論 豊かな表現活字の魅力  複雑なことを語る文化が衰退  言葉の力あれば、生きやすい  本との出合い支える体制を

秋田:大学生の娘が、「言いたいことがあってもうまく言葉で言えない」と。様々な心情語彙で丁寧に表現しないと伝わらない感情や感覚を、「チョームカツク」「ウザイ」と一言発して、後は察してもらうことに慣れてしまっているのでしょう。
北川:「察してもらう」は、日本人同士では成り立つけれど、異文化から来た人には通じませんからね。
平野:価値観が違う人たちがいて当たり前の世の中を生き抜くには、言葉を使ってお互いの考えを調整しないと、フランスで1年暮らして痛感したのですが、とにかく言葉ができないのは圧倒的に不利。自分の考えをうまく伝えられず、相手のことも理解できず、ストレスもたまる。豊かな言語を持っていれば。その分生きていきやすい。
山根:そうした言語力をつけるために、読書は役に立つものでしょうか。私などはただ好きで本を読んできたので、「役に立つ」という発想はなかったけれど。
北川:「読むこと」は、「書くこと」とともに言語体験の基本になると思います。読書はひとりでできるし、いまや活字文化のなかでしか使われないような豊かな表現や言葉に触れらますから。
平野:今は膨大な情報を急いで処理しなければならない時代。だからこそ一方でじっくり味わって本を読み、情報を的確に解釈できる力をつける必要があると思います。
山根:以前読んだフランス人の人類学者の「ひとりで本を読めば内省が可能になる。それは精神の構造を変える」という言葉を思い出します。
平野:いまやネットで検索すると、ドストエフスキーの作品の標準的な解釈まで載っている。「標準」にとらわれると、ものの考えが平板になってしまう恐れがあります。誤読することで、読者の読む力、考える力は発展してゆくものなのに。そうした現実も踏まえておきたい。

'09.9.4.朝日新聞 パネル討論   山根基世さん    北川達夫さん  平野啓一郎さん  秋田喜代美さん

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