散歩道<3119>
opinion・09政権交代・民主党で大丈夫か (3) (1)〜(4)続く
なぜ自分たちか、まず胸に刻め
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第2は、実体的な政策論議についての注文である。わたしは、今回の選挙においてマニフェストが大きな役割を果たしたとは思わない。国民がマニフェストを読み比べて民主党を選んだなどという神話を信じてはならない。世論調査によれば、民主党の政策各論について、必ずしも国民が高い評価をしているわけではない。ということは、律儀にマニフェストの項目を実現し、自分で合格点をつけるなどという発想をするべきではないのである。政権運営と試験勉強は違うのだ。
数値目標だの財源だのを過度に強調すれば、政治家が本来持つべき構想力がしぼんでしまい。官僚の発想に近づくことになる。官僚批判が売り物の民主党にとって、何とも皮肉な現象ではないか。
今の閉塞感(へいそく)を打破するためには、大きな社会ビジョンを提起することこそ、政治家の使命である。例えば、従来の日本の社会保障制度や税制は、自民党政治家の保守的な家族観を反映し、父親が一定水準の給与を得て、母親は専業主婦として家族の世話をするというモデルを前提としてきた。経済の現実はこのようなモデルから離れて動いており、たとえば保育所不足という形で、実態と政策の乖離に(かいり)に多くの人々が苦しんでいる。
政治家の仕事は、政策の前提となる家族像を転換し、多少賃金は下がっても夫も妻も働いて、家族の生活を支えるというモデルを示し、それを具体的に支えるような税制、社会保障制度、さらに介護、保育などの社会サービスの整備を構想するという点にある。
社会保障に限らない。国土の姿、環境政策のあるべき方向、多くのテーマについて、21世紀にふさわしいビジョンを語ることが求められている。
'09.9.3.朝日新聞 北海道大教授 山口二郎氏
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