散歩道<3108>

                        経済気象台(488)・金が敵(かたき)の世の中                

 米オバマ政権による公的資金で救済した米大手銀行各社の高額報酬査定が9月中にはまとまる運びだ。役員、ディ−ラなど約100人の報酬が遡上に載(の)せられているという。
 投機を投資だと言いくるめた商法が仇
(あだ)になり破綻(はたん)に瀕(ひん)したこれら世界的金融危機の”元凶”を米国民の税金で救済したこことに対する批判は依然収まらず、高額報酬の抑制を求める声は強い。
 そうした国民感情を横目にウォール街は背には腹は代えられないと対応に追われている。証券、投資銀行にとって有能な役員、敏腕なディ−ラーの確保は死活問題だ。政府による報酬規制を嫌って見切りをつける腕利きのディ−ラーが増え、業界大手では引きとめに苦慮する一方、逆に引き抜きに打って出る証券もあり、疑心暗鬼も増幅している。ニューヨーク・タイムス紙には、野村證券の米国法人から直接高額で誘いを受けた高名なディ−ラーの記事も載ったほどだ。まさに「金が敵
(かたき)の世の中」
 批判されている高額報酬は業績に応じた出来高払い制だから目立つのだと、成績には関係なく一定額を保障する定額報酬に切り替えて、人材確保をはかろうとしている話もある。この方式だと、業績不振でも高額のボーナスは必ず払う場面も出てくるので、逆の意味でまた高額報酬問題がウォール街を揺さぶる可能性も出てくると懸念する向きもある。
 ウォール街の友人の一人は、早くに大手証券の商法を見限り、ミッド・マンハッタンにオフイスを構えたお陰で、旧職場が崩壊した9・11テロでは命拾いをし、サブプライム危機は手早く切り抜けた運の強い人物だが「報酬の多額が問題ではなく、金融人のモラルが問題なのだ」と達観している。

'09.8.29.朝日新聞