散歩道<3094>

                           経済気象台(477)・鼎(かなめ)の軽重を問う

 ラクイラ・サミットは、先進国群としての主要国首脳会議(G8)の世界経済運営能力の限界を露呈したといわれる。「鼎(かなめ)の軽重を問う」となると、経済的パワーポリティックスの行く方が気になる。世界的金融危機はその克服過程を通じて国際経済システムを再構築する絶好の機会なのだ。
 米オバマ政権の登場は対中強調の幕開けとされ、外交専門家らが米中2極構造G2の到来を唱えている。中国のGDPが米国をしのぐ日がくるのは間違いない。
 しかし、欧州連合(EU)が米中によるG2を座視はしないだろう。いまは金融危機で自信を失っているが、年内にも「EU大統領」が新設され、英政府は候補としてブレア前首相を推すなど、鼎
(かなめ)の一足となる存在感は増す。EU経済圏のGDPは米国に次ぐ。円熟した国際金融市場を持ち、世界各国の外貨準備高の比率でもユーロはドルの64%に次ぎ26.5%を占め、質的に中国の人民元とは違う。
 アジア経済圏は、金融危機で説得力を欠いた「デカップリング論」つまり、欧米景気が低迷してもアジア諸国は相対的に高成長を続けるという説が息を吹き返している。金融危機の被害が比較的少なかったので、財政出動もネガティブな銀行救済より景気浮揚策に直接振り向けられたので、欧米諸国より早く経済見通しに明るさが出てきたからだ。
 欧米向け輸出に頼ってきたアジア諸国の早い立ち直りはアジア圏に世界経済の一極を担う自信を与えるかもしれない。ならばEUのような同質性に欠ける日本、中国、インドはじめアジア諸国が、域内で覇権を争う愚蒙
(ぐもう)はさけなけえばならない。その指導力発揮に先進国日本の役割がある。


'09.7.30.朝日新聞