散歩道<3084>
opinion・09政権選択・8月30日の夜に・万歳より世界にメッセージ(2) (1)〜(4)続く
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現在の日本は、表面的な豊かさと便利さの影で、人々の目線は内向きになり、社会の結びつきが分断化、細分化しています。たとえば,個々の企業にとっては人員削減,派遣切りなどによるコストダウンは合理的でも、それが集まると全体には大きな不合理となります。細かな政策論議も大切ですが、単なる選挙公約を超えた、樹木で言えば「幹」となるべき「理念」や「哲学」こそ私は聞きたい。個々の政策は「幹」から導きだされるものですし、たえず「幹」にもどりながら熟議されるべきものです。
でも、実は,政治家は「理念」や「哲学」を語るだけでは十分ではない、と私は考えています。
昨年の大統領選は、多くの人にとって、まだ記憶に新しいでしょう。政治の世界でも、心を揺さぶられるような言葉や行動の数々があることを私たちは知ることができました。
例えば、オバマと争った共和党のマケインは、ベトナム戦争で捕虜収容所に5年半もいた際、仲間を置いて自分だけ釈放されることを固辞したという武勇伝を持ちます。オバマも、ハーバードのロースクールを卒業後、高収入と出世への道を自ら絶って公民権専門の弁護士という地味な色を選び、貧困層の救済に尽力しました。だからこそ、2
人が描く「アメリカ」には強い説得力がありました。「友愛」や「とてつもない日本」とは、語っている重みが全く違います。
衆院選は終盤を迎えましたが、これまでの選挙戦の中で、私たちは各党の党首や幹部、候補者達から、人間として、あるいは指導者としての、資質にとんだ言葉や行動をどれだけ見聞きできたでしょうか。
近代民主政治は財力や血統ではなく、言葉で行われるべきものです。その言葉に信頼を与えるのは、語り手の生き様や資質です。こればかりは、いくら優秀な政治コンサルタントが付け焼き刃的に鍛えようとしても得られません。
'09.8.27.朝日新聞・慶応大学教授・渡辺靖さん
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