散歩道<3083>
opinion・09政権選択・8月30日の夜に・万歳より世界にメッセージ(1) (1)〜(4)続く
先日、ある国際会議で、アメリカ人の旧友と久々に再会しました。彼はアメリカの有力大学で日本政治を教えている。その彼が「日本の政治は、もはや政治学では分析できない。ほとんど文化人類学の領域だ」と話していました。
私の専門を知ったうえでのジョークですが、日本の政治が「理念」や「哲学」ではなく人間関係や権力関係中心に動きすぎていることへの皮肉も込めていたのでしょう。
人類学は「人」そのものに注目する学問です。たとえば、婚式や葬式などの儀式で、誰が呼ばれ誰が呼ばれないか、誰がどこに座っているか、誰と誰が口をきくかなどを観察しながら、人と人との関係や力の構造を探っていきます。日本政治の研究者にとって最も理解に苦労するのが、こうした「人」にまつわる部分でしょう。記者たちが有力政治家に張り付いたり夜討ち朝駆けで密着したりして取材するのは、確かに「人類学的」かも知れません。
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日本の政治がひどいのかといえば、世界を見回す限り、そんなことはありません。イギリスの「エコノミスト」誌が発表した「民主主義指数」08年版によると、日本は167ヵ国中17位です。「十分に民主的」な30ヵ国に入っています(ちなみに1位はスエーデン、最下位は北朝鮮でした)。自由で公正な選挙を享受できている数少ない国の一つです。
ただ、「理念」や「哲学」がなおざりになっているというアメリカの友人の指摘には私も同感します。今度の選挙でも、政党が作った「マニフェスト」と称する詳細な冊子はありますが、これは「選挙公約」と表現すれば足りる内容です。仮に外国語に訳しても、国際的にインパクトを与えられるとは、とうてい思えません。
'09.8.27.朝日新聞・慶応大学教授・渡辺靖さん
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