散歩道<3043>

                    opinion・私の視点・人事権掌握・党首の公約に(2)            (1)〜(4)続く
                                 官僚改革   

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 93年、細川護煕内閣の首相特別補佐として首相官邸に入った私は当時、「日本の首相は行政の海に浮かぶヤシの実だ」と表した。官僚が民意ならぬ”官意”によって首相を動かそうと、あの手この手で取り込みをはかり、隔離しようとするやり口が目に余ったからである。
 「政治機能の強化」には首相秘書制度の改革も欠かせない。外務省、財務省、警察庁、経済産業省から出向、事務担当秘書官として首相を支える彼等は、首相と出身官庁の意向が同じであればアクセルになるが、意向にズレがあればブレーキとなる。
 ある首相は私に「彼らは役所のスパイだ」と言い切った。別の首相は「官僚が公邸の会議室に盗聴器を仕掛けると聞いたが、本当ですか」と真顔で尋ねた。「彼らはそっぽを向かれたら、なにも仕事が出来なくなる」と嘆いた首相もいた。官僚に任せきりの首相ならともかく、自分の政策や信条を貫こうという首相にとって。官僚に一挙手一投足を監視される今の体制は最大の障害となる。
 神輿
(みこし)首相の主たる担ぎ手が官僚である現状を打破し、政治家や民間人が担ぎ手となるような体制を整えることこそが、「政治機能の強化」の第一歩なのである。これはオーストラリアの担当者たちが何度も念を押した点であった。
 オーストラリアの行政改革は大規模な機構改革も伴ったが、「最大の成果はなにか」という私の問いへの応えは、ある意味以外だった。それは、
 ・・・・事務次官の人事を大臣から首相に移したこと、だった。なまじの機構改革よりも行政全体に大きな影響を与えたという。
 事務次官を大臣が選ぶと、どうしても官僚側の意向を尊重してしまう。その結果,省益の追求に熱心な官僚が出世しやすかった。だが、首相が選ぶとそういう官僚ほど真っ先に除外され、省益が二の次の視野の広い官僚が抜擢
(ばってき)されて、流れが大きく変わっていたという。

'09.7.30.朝日新聞・元経済企画庁長官・田中 秀征氏


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