散歩道<3014>
経済気象台(472)・100兆円の授業料
リーマン・ショックを機に、金融市場が一瞬にして凍結し、機能しなくなった。米国の消費者は借金ができなくなり、消費は落ち込んだ。米国は自国で生産する以上に消費し、多額の輸入をしてきたが、それが激減してしまった。米国の輸入に牽引されてきた世界経済は大きなショックを受けた。
しかし、半年も過ぎて、大幅な減産が効果が表れ、積みあがった在庫は調整が進み、生産も底を打って増加に転じている。そこで、再び米国が輸入を拡大してくれるのではないかと、期待が寄せられ始めている。ところが、公表されたばかりの日本の対外資産負債残高の統計がせっかく生まれた期待に冷や水を浴びせかけた。
日本の居住者は08年末時点で、519兆円という巨額な対外資産を保有しているが、1年前に比べて大きく目減りしていたのだ。その要因は「ドル、ユーロなどの主要通貨にたいする大幅な円高が円評価額を大幅に減少させ、マイナス103兆円資産残高を押し下げた」とある。
日本経済は輸出依存の成長を求め、輸出競争力をそがないように、官民そろって円高阻止の行動をとってきた。貿易取引で、海外から受け取り超となるドルなどの外貨を円と交換せず、再び海外に還流したのである。その結果、対外資産の累積となった。
昨年秋以降、ドルを支えきれなくなって市場が動き、巨額の損失を負ったというわけだ。政府の外貨準備だけでも25兆円の為替損失を計上している。予期せぬ為替損失で日本経済は元気を失いかねない。しかも、ドル買い支えの損失という高い授業料の支払いをこれ以上続けようにも、米びつの底が見え始めている。
'09.6.3.朝日新聞