散歩道<3013>
経済気象台(471)・時、人を待たず
7月8日からイタリアのラクイラで主要国首脳会議(G8サミット)が開かれる。前回イタリアで開かれた01年ジェノバ・サミットは、グローバリゼーション は先進国の利益追求の道具だとして「彼らは8人、われわれは60億人」と叫ぶ20万人規模の反グローバリズム団体のデモに包囲され、治安当局との衝突でデモ参加者に死者が出る惨事となった。今回は未曾有の世界的金融危機のさなか。ラクイラは4月の大地震の被災地で今も余震が続いている。因縁浅からぬ感じだ。
それに参加8首脳は、オバマ米大統領を除いて満身創痍(そうい)で政治的地盤も脆弱(ぜいじゃく)だブラウン英首相 は欧州議会選挙で自党労働党が大敗し、サルコジ大統領は年初から抗議ゼネストに見舞われている。メルケル独首相も外需落ち込み打開策に苦慮、プーチン・ロシア首相はバブル崩壊対策に手いっぱい。麻生首相も苦境のどん底。議長のベルルスコーニ伊首相はスキャンダルの渦の中だ。
皮肉だが、首脳たちを助けているのは時代の趨勢(すうせい)だ。世界的な大企業や金融機関がリストラされ、失業者が増え、消費が落ち込み、世界中がデフレにあえいでいるにもかかわらず、これに抗議する”赤旗”が見えない。仏ゼネストでさえ気勢をそがれた。今回の金融危機は資本主義の欠陥が露呈したとの論評はあっても、一昔前のような資本主義対社会主義的なイデオロギー論争にならない。失業者には金融関連のホワイトカラーが多いせいか、抗議行動は肩を組む連帯感とは無縁なブログなどネット上のバーチャルな世界で代行され、怒りは内向的に醸成される。
「時、人を待たず」。
G8はこうした21世紀的暗流を把握できるのだろうか。