散歩道<3004>

                池澤夏樹さんの「終わりと始まり」の文章・空中の視点とエコロジー・を読んで(2)、           (1)〜(2)続く
                         
映像の美しさのみで訴える
                 
 
                                                          
  先に思想はエコロジーと書いた。またその話かと思われるかもしれない。そうなのだが、しかしここには『不都合な真実』や『アース』とは異なるものがある。出身のメディアが違う。『不都合な真実』は基本的にはアル・ゴア*1の講演の映画化だった。画像は彼のメッセージを補強するものだった。『アース』の基本はテレビである。監督のA・フォザーギルはBBCの人であり、一つ一つのエピソードは小さなドラマに仕立てられていた。彼は作者である以上に編集者だった。それに対して『HOME 空から見た地球』の基礎は写真だ。砂漠を摂る時のヤン・アルテュス=ベルトランの色調は1980年代のいわゆるニューカラーの写真,たとえばリチャード・ミズラックの「デザート・カントス」などに似ている。そして風景を風景のまま動画にするとしたら、ヘリコプターに勝る視点は無い。だからこの映画の特徴は、ゴアのように説得的でも、フォザーギルのように感動的絵もなく、美しいという一点にある。
 なぜ主題がエコロジーなのか?
 どうやら温暖化は否定できないらしい。異論があることは承知の上で、しかし事実と認めよう。人類にとって温暖化は宇宙からの侵略者のような脅威だ(本当はその正体は自分たちの暮らし方なのだが)。
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 先日のボンの会議で日本が提唱した二〇二〇年までの温室効果ガス削減目標の数字は落胆と失笑を買った
*2。この国では目前の利を求める産業界がこの流れを決め、政治はそれに奉仕し、国民は無関心、という構図をそのまま映すものだった。
 日本ではこの映画はほとんど話題にならなかったようだ。それが偶然ならいいけど、無関心の表明だとしたら残念だ。エコ・ポイントとプリウスだけでは世界は救われないだろう。

'09.7.4.朝日新聞・作家・池澤夏樹さん

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