散歩道<2998>
経済気象台(464)・景気回復の基準とは
部品加工の工場が異変を感じ始めたのは昨年の今ごろだった。仕事が入らなくなったのである。「クルマが売れなくなったそうだ」という情報が伝えられた。
同時期、工作機械など設備投資関連部門は6ヵ月分の受注残を抱え、07年度に続いて業界は始まって以来という我が世の春を謳歌していた。
そして1年後の今、クルマ関連もやっと動き出し景気は明らかに回復に転じている。しかし、設備投資関門はまだ前年比で20%の受注と底に沈んだままである。とはいえ同部門も状況は動いている。
工場の聞き取り調査に歩いていると、受注の下げ止まりははっきりしており、「電話の数はふえています」「引き合いはふえています」という声がほとんどだ。「経済天気図」が「土砂降り」から「曇りへと移行する直前といえよう。
景気回復の基準をどこに求めるかだが、民間投資額をみると、ピークの1991年から、ボトムの2002年までに、約30%の落ち込みを見せたが、今年の回復の中身は04年から05年の水準に達するのがやっとといったところだろう。
それはそれで悪くないのだが、問題は「心理」である。「実感されない景気回復」感に支配される可能性が高いからだ。中小企業の場合は、今年の夏のボーナスはやっと1ヶ月分というところが多いし、この半年残業もなくなっていた。マクロで見ると失業率の改善も遅れるので、「景気回復」の声は弱いだろう。
06年、07年と現場は繁忙が続いたし、ボーナスも悪くはなかったが、世論の主流は「好況」とは遠かった。景気は気分なので、当分うっとおしい日々が続くだろう。
'09.6.17.朝日新聞