散歩道<2996>

                      日本@世界・「追いつき、追い越せ」脱却を(4)                     (1)〜(4)続く
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若者最大のフロンティア


 ところが日本はモノつくりは強いが、システムづくり、さらにルールづくりとなると苦手である。例えば、日本は環境では、技術は高い。企業も強い。人材も豊かである。なのに、温暖化対策で世界を引っ張ったという話は聞かない。
 日本政府が温室ガス削減(05年比15%減)の中期目標を発表した後、政府の地球環境問題担当官の一人は、フランスの担当官からこう言われたという。
 「
日本は大きなチャンスを失ったようだ*2。なぜ、日本は条件をつけないのか。もし米中などの世界の巨大排出国が野心的な削減案を出すならば、そのときは日本は90年比25%減にする用意があるといった具合に他をも動かす外交が展開できたはずなのに」
 システムづくりとルールづくりに取り組むには、世界の平和と安定に対する自らの構想を持ち、その理念を世界と分かち合い、ともに構築していく多角的な対話と外交を身につける必要がある。だが、利益誘導型の政治と対米追随型の外交からそれは生まれにくい。「追いつき、追い越せ」症候群がここでも壁になっている。
 それを克服する道は何か。次の戦略は何か。
 環境、医療、教育、文化、農業、地方・・・フロンティアが広がっている。そこから新たな国つくりの糧を取り出す。そのために市場と政府のそれぞれの役割を明確にし、ともども最大限援助する。
 その際、最大のフロンティアである若者たちを忘れてはならない。「危機の20年」でもっとも痛んだのは若者層だった。企業は中高年層を守るため若年層にツケを回してきた。こんな「未来の先食い」はもうやめなければならない。
 何でもいい、職の不安定な若者たちに何か一つ資格を取らせるような「一人一資」支援体制がとれないか。彼らに働く場と希望を与えなければ成らない。青年の自立、発言の機会と決定への参画、社会に対するコミットメントを促す。公共政策としての青年政策を確立するときである。


'09.7.2.朝日新聞・本社主筆・舟橋洋一氏

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