散歩道<2982>
                       社説・オピニオン・水俣病の政治学(4)               (1)〜(5)続く

 水俣病の未認定患者問題で蒲島郁夫熊本県知事が動いた。先月末、水俣で被害者と会ったそお足で永田町へ。別々に救済法案を出した自民、民主両党幹部に今国会成立を訴えた。合意形成のポイントはどこか、政治学者出身の知事に「水俣病政治学」を聞いた。

                  いま国会しかない時間的緊迫性こそ政治決断生み出す
○  ○   
 ・・・今の政治家蒲島を、政治学者蒲島はどうみていますか。
 「学者のころ、私は世論調査で大きな間違いをしていました。一人一人の世論は均一だと考えていたのです。たとえば幸福を感じる程度はみな同じだと。違うんです。たとえ人数は少なくとも、その人たちが抱える抱える不幸の量が多数の人たちの幸福の量より重い場合がある。世論調査の数字を眺めるだけでは、それは分かりません。どんなに少数であろうとも不幸の大きさを測って対処することが、政治家としては大切なのです」
 水俣病はその典型です。多数意見に従って決定しても、そこからもれた少数者の不幸は重い。とすれば、最終決着とはいえないのではありませんか。
 「完璧な理想を言えば他の案もあるでしょうが、現在、できる範囲で決着するしかない。もちろん少数者に思いを致しつつ、総幸福量を最大にするよう努めたいと思っています」
 ・・・・知事は、地元・水俣より永田町や霞ヶ関の方をみて、解決を急いでいる印象があります。
 「地元に決着を急ぐべきだという意見と、原理原則を曲げず時間をかけるべきだという両様の意見があるのは確かです。だが私はやはり、今国会でまとめることが水俣の総幸福量を増やすと判断します。一方で、不幸量を減らす工夫をしていきます。そこは政治的判断です。総選挙後に先送りすれば、解決まで長引き、多くの人が救われません」
 ・・・・政治学者としてこの水俣病の決着の最大のポイントはどこにあると。
 「キューバ危機の13日間の例を引くまでもなく、戦争や災害は緊迫性があるから政治の決断が早い。今回の水俣病を巡る一連の動きには時間的な緊迫性がない。政治学者として考えるのは、時間的な緊迫性を作りださなければいけないということ。今国会中に決めるという目標は格好の時間的緊迫性を生みます」


'09.6.10.朝日新聞・蒲島郁夫熊本県知事

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