散歩道<2972>
この文章を読んだ時、生きているということは、このようなことをいうのではないかと、感じたので書かれた通り紹介する。
世界が少しばかり見えてくる。来月初め、バイクでユーラシア大陸横断の旅へ(2) (1)〜(3)続く
温度や湿度を五体で感じ、音や匂いが皮膚から沁みこむ
写真はポルトガルから東京まで
バイクで旅すると、体で風景と出会える。体は日晒(さら)し、雨日晒し、だから温度や湿度を五体で感じ、音や匂いが皮膚から沁みこむ。国境を越えるたびに風景が変わり、路面の状態が直接体に伝わり、道端の人々の表情や暮らしのデテーィルが目に焼きつく。
バイクで走ると風景は風のように飛んでいく、などというのは嘘(うそ)で、実は足元の小石から地平線に沈む夕日まで、大いなる広がりと奥行きの細部がよくみえる。そして、毎日毎日積み重なっていく風景の断片が集まって、旅の記憶になる。世界が、少しだけ見えてくる。
バイクで日本の外に出てから今日までの26年間で、およそ30万`の道を這う旅を続けてきた。今でも目を閉じれば、駆け抜けて来た風景を、旅してきた世界の音や匂いを、そこで出会った人々の表情とともにおもだすことが出来る。少なくとも私は、それを求めて旅してきた。地を這うたびは趣味や仕事の範疇(はんちゅう)を超え,今や私のライフスタイルの芯ににある。バイクの旅の面白さや深さを知らなかったら、私の人生はずいぶんとうすっぺらなものになっていただろう。
'09.6.17.朝日新聞・作家・戸井十月氏
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