散歩道<2903>
面白い文章(21)-1・半藤一利様・21世紀への伝言(文芸春秋)から
1、トインビーに勲一等・「すべての歴史は現代史である」・1969(昭和44)年2月18日
イギリスの歴史学者トインビーの名は、日本でも大そう知られている。何度も来日して講演しているし代表作「歴史の研究」をはじめ殆どの作品が邦訳されている。恐らくこれほど多く翻訳が出版されている国はほかにないのではないか。その学問的恩恵に感謝して、1969(昭和44)年2月18日、日本政府は勲一等瑞宝章を送り、ロンドンで伝達式を行った。
彼は、激動する20世紀の生き証人といっていい。とにかく幼少時代を大英帝国の黄金時代に過ごし、長じては、その祖国が二度の世界大戦をへて斜陽化していく現実を、その目で見ている。彼の歴史研究はその認識から出発している。
「広範なスケールで現代の諸問題を概観することは、世界史という背景を用いなければ不可能である。また、世界史の研究は、研究者自身が生きている時代の歴史を除外したならば、とうてい生命ある研究とはなりえない」
そう説く彼は断言する「すべての歴史は現代史である」と。
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2、パルメ首相暗殺さる「核戦争には敗者しかいない」・1986(昭和61)年2月28日
スエーデンの首相オフロ・パルメがストックホルム中心街の十字路で狙撃されて、約1時間40分後に病院で絶命した。
1986(昭和61)年2月28日夜のことである。パルメはスエーデンの首相というよりは、「軍縮と安全保障問題に関する独立委員会」(通称パルメ委員会)の主導者として活躍した政治家である。世界的な反核・平和運動の指導者といった方がいい。かれの死は世界に大きなショックを与えたが、許せないのは、犯人も、暗殺の動機も、ナゾにつつまれたままということ。
1981年に日本を訪れて広島にも足を運んだ。原爆資料館に入ったとき、かれはすっかり寡黙になった。「どの政府であれ、責任ある地位につくものは、すべて広島を訪れることを義務ずけるべきである」
そしてまた、核戦争に言及して、それがいかにばかげていることか、
「核戦争には勝者はなく、敗者しかいない」と記者会見で、やっとの思いでいったという。
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