散歩道<2880>
opinion・私の視点・大人になる君へ・他人のせいにしない姿勢を(3) (1)〜(3)続く
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こうした大枠のもと、最後に大人になるための条件を挙げておこう。
大人になるとは、ひちり立ちすること、すなわち親やその他の保護者から独立することである。独立とは主に二つの要件からなっている。一つは、経済的に独立すること、何らかの社会的に認められる仕事をして金を稼ぐこと。これはいいだろう。
だが、もう一つ、これと同じくらい重要な要素がある。それは、金銭面以外でも他人に依存しない生き方を実現することである。すなわち、自分に居心地のいい人間関係を自力で開拓すること。きみが孤独が好きならそれを自力で達成すればいい。本当は人恋しいのに孤独を気取っている限り他人は介入するが、きみが本当に孤独を欲しそれに満足しているのなら、他人はきみを抛(ほう)っておいてくれるだろう。孤独に徹するのもいいが、一般的に言って、多様な人との付き合いはきみを豊かにしてくれる。
だが、この際とくに言っておきたいのは、きみと異質な人々を切り捨てるのではなく「大切にする」ことである。彼らがたとえ理不尽にきみに敵対的であっても、そういう人々との困難な「交流」は長い人生において真にきみの宝になるであろう。
これらの二要件を満たしていれば、もうきみは大人の入り口に立っているのだが、あえてこれらに初め強調した一要件、すなわち、きみがどんなに過酷な境遇にあろうと、なるべくそれを他人のせいにしないで「私(ぼく)が選んだのだ」と自分に言い聞かせる姿勢を付け加えておきたい。この要件をそなえていれば、きみは特別偉くならないかもしれないし、金持ちにならないかもしれないけれど、強く柔軟で深みのある大人、すなわち「よい大人」になるように思う。
'09.4.16.朝日新聞・哲学者・中島 義道氏
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