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                        中国の中間階層に日本の情報発信を

 昨秋、北京支部に出現した巨大ショッピングモールがひとしきり話題を呼んだ。何しろ東京ドームの15個分という。郊外のベッドタウンに立地する米国式で、そのあたりは20年前までは北京市民に野菜と果物を供給する人民公社だった。地下の食品売り場は体育館の23個分、客は1週間分と思われる量を買いだめし、なるほど万事米国式だ。スペースのたっぷりの駐車場は日曜日の午前中だったが7割方埋まっている。マイカーで週末に買い物をする社会階層が都市部では着実に増えていることを実感させた。同じ北京市内では4月に日本のイトーヨーカ堂の市内5店目のスーパーが開業した。反日デモの余波がある中だったが、開店日は予定通り、「地域に愛されるスーパ」を懸命にPRした。イトーヨーカ堂は日本式コンビニの「セブンイレブン」の1号店も昨年4月開業している。1年で18店まで増えた。以外な売れ筋はシュウクリームやおでん、おにぎり、弁当、惣菜だとか。1家の月収が10万円前後が購買層の中心だが、実はこの所得が今の中国の中間階層である。改革・開放がはじまって20数年たったっが国民1人当たりのGDP(国内総生産)は1千jの大台を越えた、過去の例だと3千jに達するまでが、その国の経済の「黄金発展期」とされ、その主役とされるのが中間階層なのだ。政治面でも注目されている。今回のデモ騒ぎの背景には市場経済化の急拡大で生じた所得格差や地域格差があり、中国政府に向けた不満のはけ口に「反日」が利用されたとの解釈があった。今の中国の社会構造は「鉄アレイ」になってしまったと指摘される。両極端に富裕層と貧困層が固まりをなし、中間が薄い。胡錦涛(フーチンタオ)政府は安定を確保する為中間部分を膨らませる「オリーブ型」構造にせねばならないと考えている。中間層の形成が社会安定のカギを握る。この中流家庭は現在1説では都市部を中心に1億人に達し、数年で倍増するだろう。職業では政府や党の役人のほか、私営企業家、専門職、ハイテク技術者、外資系企業職員らだ。マイホームを持ち、マイカーの所有が多い、家電1式のほか、パソコン、携帯電話も家族の必須うイテム。4月のデモは「安保理常任理事国入り反対」に加え「日貨排斥」も叫ばれた。中間層は同調するだろうか、否だろう。なぜなら、彼らは品質がよくて合理的な値段であれば、日本製品であろうと迷わず選択する「賢い消費者」なのだ。では反日感情の度合いはどうか。デモの底流には「歴史問題が」が横たわっており。この点では彼らも敏感に反応する。ただすでに資産を有するので社会の不安定化は望まない。彼らのもう1つの特色はインターネットや携帯電話を駆使して情報を入手し、それを自分の行動の判断基準にいているようだ。政府や党が管理するメディアには基本的に頼らないのだ。この隣国に台頭する中間階層にもっと注目したい。これからの中国を動かすのも、我々が付き合う相手も彼らが中心だろう。そこに焦点を絞った日本情報の発信が、今とても大事だと思う。

'05.5.5
.朝日新聞

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