散歩道<2856>
パリ・コレ不況下の底力(1) 09年秋冬コレクション (発想・世相・178に分類) (1)〜(2)続く
シャンデリゼ通りのENGLANDの店
先の見えない世界的な不況はパリの09年秋冬コレクションも直撃し、観客減やショーの規模縮小が相次いだ。不確かな新しさを避けて伝統に回帰したシンプルなスタイルが中心となったが、そうした中にも、オートクチュウル的な凝った手仕事や、メッセージ性の強い誇張した表現も目立った。経費との兼ね合いなどからパリ・コレの今後のあり方が問われる中で、デザイナーたちはやや毒のある冒険的な手法で「モードのパリ」の底力を強調し、ショーを行う意義を改めて示そうとしたようだ。
車のドアや壊れた家具、割れた鏡や台所の流し台・・・。アレキサンダー・マックインはそんな不燃焼ゴミを会場にうずたかく積み上げた。その周りを歩くモデルたちが着るのは、50〜60年前に全盛だったオートクチュウールの典型スタイルを奇怪にデフィルメした服だった。
「なんでもかんでも」
かってジパンシー女優オードリー・ヘップバーンのために作ったような千鳥格子のスーツは,裾(すそ)が大きくたわみ、汚れた感じのいたずら描きが。帽子は空き缶の袋詰めだ。ゴミ袋用の素材や紙で作ったオペラマントに、濡れ羽色の黒鳥ドレス。上品なはずの服もメークもだんだん拡張されて化け物のようになっていく。遠めには優雅に見えたドレスにも、生々しいへび柄が描かれていた。
テーマは「なんでもかんでも」。高級とチープ、天使と悪魔、本物と偽物。この対比を通じて、オートクチュウールの純粋さや拡張の高さと肥大したプレタポルテ産業の現実を見直しているようにも見える。ともかく一度すべてをひっくるめて考えてみようとのメッセージなのだろう。卓抜した造形力や細部の徹底した作りこみが、そうした意図を支えていて圧巻だった。
コムデギャルソンの不思議な形にも力があった。カーキ色のワークジャケットと毛布を組み合わせた案山子(かかし)みたいな服、ストッキング状のナイロン地で」服の輪郭がぼやけてしまったトレンチコ−ト。着ているのかいないのか、現実か夢か。あいまいなままにハッピーな曲が流れてショーの幕が閉じる。「テーマーはワンダーランド。何もかも見かけとは違う。色んな世界がある」とデザイナーの川久保玲。
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