散歩道<2854> 
            
                 opinion・私の視点・裁判(1)死刑の是非、「悩む力」も必要          (1)〜(2)続く

 犯罪の被害者らが刑事裁判に参加する新制度の導入に続き、一般市民の裁判員制度が5月から始まる。殺人罪など重大犯罪について有罪か無罪か、有罪なら、その量刑判断も問われる。
 そこで、私たち明治大法学部の犯罪学ゼミ
(指導・山本聡教授)はこの1年「死刑制度の意義と被害者感情」について学び、議論してきた。テキストとして、07年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した話題作「モリのアサガオ」(郷田マモラ著)を使った。
 この作品は、拘置所に配属された新米刑務官が死刑因たちと接する中で、死刑の矛盾に悩むというストーリーのマンガ
(全7巻)だ。主人公は、無反省な死刑因に憤り、死刑の必要性を確信するが、改心した死刑因を殺すのは正しいのかと思い悩む。最終巻では、死刑があるからこそ極悪人も人間らしさを取り戻し反省するものだとして、死刑を必要な制度と結論づけている。
 主人公の刑務官は「心の底から反省した上で死刑に処せられなければ意味がない」と語る。これこそが死刑に内在する矛盾を表す言葉だとおもう。
 主人公と同世代の死刑因は、高校時代に両親を殺され、自分の将来を奪った犯人に復讐
(ふくしゅ)を果たす。だがその後、罪の意識にさいなまれ、自分は死刑になるのが当然だと悟る。しかし、死刑を免れたいとう正直な気持にも気づき、苦悩を深める。激しい自問自答の末、裁判官に自ら死刑を求め、控訴せずに刑に服す決意をする。
 
'09.3.19.朝日新聞・明治大法学部4年・川畑 千里さん