散歩道<2852>

              opinion・私の視点・「道具村」(1)・ものづくり精神の復権を            自分流に纏めた       (1)〜(2)続く    ・・・・・発想を変える

 日本は今、経済不況にあえいでいる。世界第2の経済大国にまで上りつめた誇りと自信を喪失して、将来像を描けないでいる。起死回生の策として、私は日本人が特異としてきた「ものずくり」精神の復権こそ立ち返るべき原点と考え、「道具村」構想を提唱する。
 私は長年、工業デザイナーとしてしょうゆうびんからオートバイ、電車などさまざまな道具のデザインンを手がけてきた。戦前戦後を振りかって、日本人はものずくりにかけて独特の創造力と構想力と技術力と挑戦する精神を持っていた。加えて勤勉で忍耐力があった敗戦後も、米国人の豊かな生活を目標に、ものつくり精神は発揮された。
 だが、物質主義の繁栄は朝から晩までモノ、モノの過剰な物質消費社会をもたらし、モノが余って、精神の領域で大事なものを失ってしまった。生きるという頑張りや耐え抜くという力を忘れてしまった。自分の手で暮らしを作ったり、限られた材料の中で工夫したり、外国人に「もったいない」という日本語を教えられたりするという、皮肉な状況に陥った。
 もともと資源のない日本では百姓は大工仕事でも何でもこなし、主婦は布団ずくりから限られた素材を使った様々な料理まで工夫をしてこしらえた。衣食住の人間の暮らしに役立つ道具を作るため、職人たちはより良いものずくりに没頭し芸術のような品々を世に出してきた。
 豊かさの目標としてきた「モノ」とは何か。もう一度よく考え直す必要がある。

'09.3.19.朝日新聞・工業デザイナー・栄久庵 憲司氏