散歩道<2851>
けいざい・ノート・金融危機と保護主義(3)・日本は自由貿易の受益者・「市場」以外に道はなし (1)〜(3)続く
非正規労働者への雇用保険が非常に貧弱なのは、雇用のセ−フティーネットが、いまも正社員中心の考え方でできているからだ。又、昇進や正社員への格上げのチャンスがほとんどないため、欧州などに比べて不公平の度合いが強く、非正規労働者が多い若年層の不満を増幅している。
これらは本来、国内の労働関係制度の改革によって解決すべき問題だ。行政・経営・労働者の間での厳しい利害調整や、さらに言えば「正社員VS非正社員」の利害調整が必要なのだ。
外国を悪者にする議論は、国内の政労使の一体感を高めるかもしれないが、本来必要な利害調整の努力を棚上げにする口実になってしまう。外国やグローバル経済を悪役にするだけでは、雇用問題はさらに悪化していくだけだ。
○ ○
危機が深刻化する今こそ、われわれは内なる敵を直視して、問題の解決に努める必要がある。
最近、マルクス主義や社会主義を再評価しようという意見もある。強欲資本主義が破綻(はたん)したから、次は統制経済ということだろうか。だが統制経済がどのように腐敗し、破綻するかを知るには旧共産圏諸国を見る必要はない。社会保険庁による年金記録の紛失、改ざんなどの不祥事は、官僚による統制経済が現実に実行されると、どのような結果を生むかを示している。
世の中の人間が全員聖人君子にような立派な人間であればいいが、人間は、時に愚かで強欲にもなる弱い存在だ。その人間が、社会をどうにか運営していく方法として生まれたのが、市場経済システムである。
市場経済も失敗を何度も繰り返してきた。その失敗が、いかにひどくとも、市場経済を放棄することは出来ない。保護主義の誘惑に抵抗し、市場の不公正や欠陥を直しながら、何とか自由な経済を維持する。道は、他にない。
'09.2.28朝日新聞・経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏
関連記事:散歩道<567>、<1187>、<1251>、<1463>、<1753>、<1758>、<1907>、<2160>、<2228>、<2589>、<2676>、<2713>、<2773>、
散歩道<2792>*1世相(108)・日本の森をよみがえらす
![]()