散歩道<2848>
社説・温暖化と科学技術(3)・太陽を長期戦略の柱に (1)〜(3)続く
未来型産業をひらく
太陽電池の開発には、未来型の技術を切り開く効果もある。
いま市販されている太陽電池の主流は、太陽光のエネルギーの10〜20%を電気に変えているにすぎない。今世紀半ばまでに実用を目指す「第3世代」では、この効率を50%以上に高めるのも夢ではないといわれている。
その有望株に「量子ドット」を使うタイプがある。電子ドットとは、電子を閉じ込める極微の箱のようなものだ。次世代エレクトロニクスの鍵を握るとみられている素子である。
今日のエレクトロニクスはそろそろ曲がり角に差し掛かっている。半導体チップの回路を細密にすることで性能を高めてきたが、配線があまり細密になると従来の回路技術が通用しなくなるからだ。いま不況の直撃を受けている電器業界が再び世界市場へ躍り出るには、次世代の技術で先行することが欠かせない。太陽電池の開発は、その流れを後押ししてくれる。
このように太陽光は、ただ脱温暖化の切り札になるというだけではない。自立型の地域社会を育て、先端技術の開発に拍車をかけ、世界経済の不安定要因も少なくする。これから力を入れるべき科学技術の中心に位置ずけてよいものだろう。
政府は、科学技術政策を方向づける科学技術基本計画で、「長期戦略を明確にして取組むもの」として五つの国家基幹技術を選んでいる。宇宙輸送システム、次世代スーパーコンピューターなどとともに高速増殖炉も名を連ねるが、太陽光はない。
国家基幹技術の選定では安全保障上の意義も重んじられているようだ。ただ、最近では「気候の安全保障」という言葉に見られるように、安全を脅かすものを温暖化から資源枯渇、感染症などまで幅広くとらえるようになっている。そう考えると、太陽光発電が私たちの安全に果たす役割は大きい。
いまこそ科学技術政策の柱に「太陽」を加えるときである。
'09.3.16.朝日新聞
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