散歩道<2831>

                   時の肖像・漢字の変容・「懐かしい道連れ」とともに(2)           (1)〜(3)続く

 ○ ○
 パソコンの操作が多くの人の日常の作業となってから、まだ日は浅い。これが、何十年以上にもわたって続いたとする。物心ついた時から日本語をローマ字にしながらつづることに慣れた世代やその次の世代にとっては、ローマ字やアルファベッドが、漢字やかなにぴったりと張り付いた影のような存在になっているのだろうか。
 漢字のありようは、その時代を映し出す。幕末と敗戦という2度の「開国」で、国も漢字の世界も大きくゆれ、漢字廃止論やローマ字化、英語にせよ、いやフランス語などといった議論、提案が繰り返されてきた。世紀をまたいでこの国を覆うパソコンとローマ字入力は、ひょっとしたら漢字と日本語のローマ字化のなし崩してきな始まりで、後世からは「第3の開国」と帰させるのかもしれない。

○ ○
 テレビでは、漢字の読み書きを競う番組が目につく。読み書きが多様で、図形としても単純から複雑まで限りがない。その迷宮のような世界野謎解きをたのしみつつ、いくつかは実利もありそうなところが視聴者をひきつけるのだろう。
 さらには、「漢字バブル」のような事態まで起きている。日本漢字能力検定協会への疑惑である。受検者が急増し、もうけすぎが指摘された。受検料を下げるのが第一だが、それでも余るなら、漢字や漢字文化を考える試みをすればよい。お飾りではない識者らによる全国での無料の講演会や、漢字の歴史を物語る文物の展示会もいいだろう。公益法人が、公の遺産である漢字で、私的に甘い汁を吸うようでは困る。漢字の検定試験は韓国にもあって、やはり受検者が急増しているという。漢字文化圏
*2の日本、中国などとの交流が広がる中で、漢字の理解力が求められているようだ。先月には、歴代の韓国の首相が署名して、漢字教育を小学校の正規科目にすることを求める建議書が、政府に提出された。賛否の両論があるのは当然で、じっくりと意見を戦わせばよい。

'09.2.23.朝日新聞・論説顧問・高橋 郁男氏


関連記事:散歩道<192>象形文字、<375>*2毛筆文化・梅の花、<430>ピエログリフ、備考:ピエログリフで書いた「散歩道」<2514>情報化に対応し常用漢字見直しへ