散歩道<2824>
opinion・資本主義はどこへ・アメリカ・「脱成長」で文化を楽しめ(3) (1)〜(3)続く
○ ○トヨタに頼るな
・・・しかし、グローバル企業になったトヨタやソニーを、国内市場中心に戻すのはむずかしいのでは。
「トヨタやソニーは、もう日本の企業ではないと考えた方がいい。グローバル企業は存在してかまわないが、日本経済がそれに依存しすぎるのはまずい。国内市場で自給的にやっていける企業を育てていく。日本的経営の再構築も必要だ。株主の利益だけでなく、多面的な利益を見て、雇用も出来る限り守っていく。アメリカ型の株主中心の経営では、短期的に株価を上げるため、株式市場でバブルを作るしかなくなる」
・・・今回の危機をきっかけに、世界秩序は、アメリカ一極構造から変わっていくのでしょうか。
「アメリカと中国の綱引きになるだろう。中国は、製造業が成熟しきれないうちに金融が拡大するといういびつな経済構造のため、経済を膨張させていかないと国が持たない。その点でアメリカと共通している。それに、欧州連合(EU)、中国、ロシア、インド、アラブ諸国、そして場合によってはブラジルが加わり、不安定な多極構造になってゆく」
・・・日本は?
「残念ながら極には入らないでしょう。国際的な連帯を考え、アメリカを牽制するためにEUに接近し、中国を牽制する為に東南アジア諸国と連携するといった、多極的な戦略が必要になる」
・・・極になれなければ、国際社会の中で埋没していきませんか。
「そうならない為に、文化を通じて他の国にアピールしていく。ただ、ゲームやカラオケだけではだめです。理念や伝統的精神を大事にして、日本でなければ見られないもの、味わえないものを再生させていくことが重要になってくる」
・・・・アメリカの政治学者で今度、駐日大使になるジョセフ・ナイ氏は、国際政治で文化や価値観などの「ソフトパワー」を活用することが重要だと主張しています。その考え方に近いのですか。
「ナイ氏は、アメリカの覇権を維持する為にソフトパワーを提唱したが、そういう戦略的発想は必要ない。我々が本当に望んでいる生活とは、豊かさとは何かをもう一度考え直す。資本主義に引きずられて高層マンションが次々と建っているが、そんなところより京都の町家で暮らしたいと、多くの人は思っているはず。成長率が低くても、ある程度豊かに暮らせて、文化を楽しめる社会を作っていく。それが日本が目指すべき方向ではないですか」
'09.1.26.朝日新聞・京都大教授・佐伯 啓思さん
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