散歩道<2821>
                  opinion・世界経済・資本主義はどこへ(3)              (1)〜(3)続く
                       多様な価値映す市場を

○○援助は「公共財」
・・・途上国との関係でいうと、景気が悪いのだから、政府の途上国援助(ODA)にまわるお金があるなら国内で使え、といった意見も出てくると思いますが
 「援助って、お金だけではない価値といった話とちょっと似ていると思うんですよ。日本が今より貧しい時、援助はぜいたくなものとされ、価値が認識されなかった。それが成長を遂げ、国際社会の重要な一員になると、世界への貢献といったものが意識されるようになるのではないでしょうか。援助は、貧困の削減は勿論、紛争やテロ、環境破壊、感染症などを減らすための『国際公共財』だと考えてます。日本の場合、軍事力による国際貢献は選択肢にないので、援助は「これが日本の貢献です」とはっきり言える売り物の一つだと思います」
・・・旧大蔵所に入った石井さんがなぜ開発分野に?
 途中略・・・・貧困が原因で自分の生活をコントロールできない人たちが、援助を通じて自分が、人生の主人公だと思うようになる。それで、すっかりはまってしまいました」
・・・グローバル化が進んだ資本主義社会では、先進国と途上国の格差は結局はちじまらないのでは。
 「確かに資本主義には相対的な格差が内在します。成果の違いで得られる報酬が違うことは、システムの根本ともいえる。格差の拡大を食い止めるのはどうしたらいいか、競争の結果どうしても底辺になる国に何が出来るか。それが援助の役目の一つです」
 「今回の経済危機で最も深刻な影響を受けるのは、世界の貧困層です。少し前の食料・燃料価格の上昇で、すでに1億5千万人が貧困状態に逆戻りしていました。そこへ今回の危機です。世銀は、世界の成長率が1%減ると、世界の貧困人口が2千万人増えると予測しています。経済危機を『人道危機』にしてはいけない」
・・・・今後、保護主義的な動きが強まる可能性は。
 「そうした動きは結局は自分の首を絞めます。国際協調によって開かれた国際システムを維持できるよう踏ん張る必要があります」「今回の危機で驚いたことの一つが、情報の伝わり方でした。スリランカでは、トヨタは工場を休ませることを普通の人たちが知っていて、『これは大変だ』と話しているのです。グローバル化で世界が狭くなり、情報が私たちを密接にしています。そんな時代ですから、ネットワークをつくって世界の人々の意思や知恵をつなぎ、問題解決に向けて、アイデアや資金を募ることが出来るのではないでしょうか。世界経済の運営も、多極化に見合った体制に改め、途上国の声を反映させることが必要です。ビジネスや学界、市民社会からも参加してもらえば、大きな力になるでしょう」


'09.1.19.朝日新聞・世界銀行スリランカ担当局長・石井 菜穂子さん