散歩道<2814>
仕事力・判断の核を育てよう(3) 自分流に纏めた (1)〜(3)続く
粘り強く未来を紡ぐしかない 日本の影響力の絵を描く
日本は今本当の大きな岐路にある。この事実を仕事の現場にいる方々は強く実感しているでしょう。将来的に労働力が減少するのは明白、もう一度高い経済成長がやってくるとは考えられません。それは中国やインドなどの近隣の人口大国*1に訪れる未来です。米国の力も相対的に弱まるでしょう。そういう現状で日本の幸せをどう描くのか。私は外交の力を用いて日本の影響力を拡大し、国益を担保していく必要があると思います。人間は一つの問題にとらわれることが多く、それに対してメディアもその場の感情論が先立ち、世論を動かすことがあります。しかし、外交はそういう感情の発露を冷静に抑えて、大局を見失わない政策に戻していかなくてはならない。私はいつもそう考えて仕事をしていました。一つの大きなモデルとなるのがやはり成熟した英国でしょう。世界の状況や物事を客観視し、世界地図を広げて大きな戦略を立てている。すでに高度成長期を過ぎた国家として、最も英国の特性に合った役割は何かを考える政策には学ぶべきものが多いのです。外交交渉の現場では、こちらから頭を下げて頼むといった交渉をしても結果を得ることはできない。それなりに相手を動かす力を持ちいて動かざるを得ないように相手を導く必要があります。それを「テコ」と呼んでいますが一種の知の世界、ソフトパワーの世界です。では日本の「テコ」はなにか。一つは世界第二の経済力であり、技術を含めた先進性。外に向かって影響力のある使い方を熟慮しなくてはなりません。そしてもう一つは、やはり最大の軍事力をもつアメリカとの強い関係を影響力に転嫁するということです。国益を守るために外交は立ち止まることがありません。外交官はプロフェッショナルの最たるものだと思います。諸外国の歴史、文化、国民の意識などについて熟知し、言語を含めてコミニュケーションの高い能力も要求され、国によっては生命の危険を伴ないます。日本の運命を左右しかねない最前線にいるわけですから、国際関係の基本的な法則も踏まえていなえればなりません。そして経験が何よりも重要です。多くの経験から世界が見えた時、始めて自分自身の中核となる考え方の軸が定まって確信が持てるようになるのです。若い人には「大儀」ということは大げさに聞こえるかもしれませんが、どのような仕事でも最後は「大儀」に行き着くものです。常に何のためにと考え続け自分の気持ちを固めていく。その実現に向けて自分の人格、そして自分の職業をつくっていくことです。ヒトから押し付けられても人間は動けません。どこまでも誠実に行動できるのは、自分で培った確信というパワーがあるからなんです。ぜひ若いうちから自分にできる経験を積み上げていってください。
'09.2.8〜.2.15.朝日新聞・日本国際交流センターシニア・フェロー、田中 均氏
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