散歩道<281>

                            仕事について(2)朝倉 摂様
                              仕事に精神を絞り込む

 日本文化が極めようとしたある種の合理性は確かにうつくしいけれど、そこには打ち破れない形が出来ています。その形にはまっていくのが、心地良くなったら駄目です。自分のエネルギーが枯れ始めたと考える方がいい。私は演劇や舞台はこういうものだという先入観は破壊したい。日本のビジネスマンは常識を外れても踏み込んで持論を言っていますか。自分を殺していませんか、波風をたてまいとしてませんか、私から見ますと一人一人が逃げようとしている。安全弁をつけておいて意見を言う。思ったこと、考えたことを勇気を出してその場で発言する。素直になれない人と、仕事をするほどつまらないものはありません。自分の心の深くから自分で引き出して言葉、発想で積極的に進む。そこに新しい仕事に活路が開けてくるのではないでしょうか。時代を経るにつれて(私が描きたいと思っていた)ピカソの作風はどんどん変わりました。時代のスピードというものはあります。私は絵という二次元から三次元、四次元へと飛び出した。時代の空気を表現する、音も、動きも、演出や俳優の力、照明の力、全てが1つになっていく、仕事は時代を受け止めて表現するエネルギーに満ちています。若い人は時代を切り結ぶような仕事をしてほしい。分野は問わない。今自分が生きているこの時代に何が求められているかと、するどいアンテナを張ってほしい。このままでいいのか、危機感を持ってほしい。無鉄砲に新しさを求めて何かを探せというのではなく、あなたが今たっているところで考えればいい。あの人は運がいいとか、チャンスをつかむのがうまいと思える時がある。それはしっかりと仕事を続けている人に訪れるものです。脚本と演出家に出会うチャンスは大切です。ではチャンスって何です。お互いに求めあう力ではないかと思います。いい脚本はいい役者を求め舞台美術家を求めます。その選択技の中に自分が入るのは自分自身の仕事が見えていなくてはいけません。同時にチャンスが回ってきた時に、それを生かす力を備え付けていなければならない。脚本は予算が付きまといます。それを補うのは発想やアイデア、今まで思い込みを破壊する力。精神を絞りこむ集中力も体力も必要です。好きな仕事に突き進むなら徹夜もする、絶えず求め歩き回らなければ成らない。(朝日新聞'03.5/4-5/25)