散歩道<2806>

                         経済気象台(418)・脱成長志向と新路線

 90年代以降、我が国はより自由で活力ある社会を目指したが、そのセフティネットの基盤整備が十分でなかったので、グローバル化と規制緩和に伴う新しい経済社会づくりに失敗したというのが現状であろう。その結果、訴訟社会や格差社会だけが残ってしまった。しかも大不況と重なり、その影響は、弱者へ重くのしかかった。こうした状況を打開するには従来の常識的手法では対応できそうにない。
 過去の不況期には、従来の常識が通用しなかった。71年の円の切り上げの際、国の大半が反対意見であった。ところが切り上げてみると、原材料が安くなり、中小企業にもプラスであった。また73年のオイルショック時に物価の急騰に対応して、引き締め策一点張りであった。そのためマイナス成長を経験した。90年代のバブル
*1崩壊後も従来の常識にとらわれ、「失われた10年*2」といわれるようになった。
 今回の大不況では景気回復を優先しているように思えるが、それにもまして医療制度、消えた年金の後始末、派遣労働制度などの問題があり、持続不可能な社会になりつつある。早急にこれらに対応する必要がある。
 国民の大半は、我が国は借金が多く財源不足であり、いずれは消費税を増税しないと国の財政がもたないことをよく理解している。いま求められている常識は、成長志向より福祉政策、クリーンエネルギー対策、労働安定化策の充実である。人間尊重の中長期目標を明示し、徹底して財政のムダを排除し、重点配分することである。わらわれは無意識のうちに成長を前提にした政策にとらわれているが、少子高齢化社会、環境、借金財政の現状を考えると成長には限界がある。

 '09.1.29.朝日新聞 

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