散歩道<2782>
私の視点・企業評価・利益より付加価値額に着目(3) (1)〜(3)続く
○ ○
ここでいう付加価値とは、売上げ高から原材料費・原価償却費などを差し引いて得られるものだが、その実態は利益だけではなく、賃金も含んでいる。企業の本当の評価はどれだけの付加価値を生んだかという点からなされるべきだとすれば、この総資本付加価値率で評価されるべきだ。
実際、生産性については、付加価値額で計る重要性を誰しもが認めており、企業内部では、仕事の効率を図るために付加価値を意識した管理会計制度を導入している企業も多い。
私はさほど新しい提案をしているわけではない。
雇用の流動化や会計革命が始まる前の80年代初頭までは人件費などの情報を決算書からつかむことができた。当時は、正社員中心の企業経営で労働力確保を外部に依存することはほとんどなかったからだ。有価証券報告書に開示されている正社員数、社員の平均年齢、平均給与、勤続年数をなどをみるだけで、従業員という視点から企業活動を評価することができた。
しかし、子会社を含めた現在の連結決算では、付加価値の総額を捉えることができない。有価証券報告書に掲載されている連結財務諸表からは、業務委託や派遣を含めた人権費の総額を把握することができないからだ。
企業内部では生産性に直結する付加価値額を意識して経営しているのに、企業外部の投資家や国民からは、その付加価値額がわからないというのは問題だ。
その結果、経営者が頑張って雇用を守り付加価値額を維持していても、利益が下がれば、直ちに経営責任が問われてしまう。ディスクロジャーが大切だといわれているのに、肝心な数字が公表されていない。
企業の目的は付加価値をつくり出すことにある。企業評価の基準を利益中心から付加価値額へシフトさせるための情報開示をするべきではないのか。雇用を守るための経営者への規律付けという観点からも是非とも必要だ。
'09.2.2.朝日新聞・日本大教授・稲葉 陽二氏
![]()