散歩路<276>

                    
ジェームズ・ラブロック・
仕事について(2)100年の視野で進む          (1)〜(2)続く

 生物地球科学にしても専門的で非常に狭い分野に向かっており、さらにその中でも細部や過程を追い求める努力がなされている*2それが問題を抱えつつある地球全体を捉えた研究には思えなかった。生命体のシステム科学としての地球生理学の視点こそ必要だと直感できました。つまり地球という惑星は、人と同じ生命体であり、現在どのような病気や怪我を抱えているのか、診断することから始めようと考えたのです。温暖化という熱をもち、酸性雨を処理できずに消化不良をおこし、フロンでオゾン層で怪我をしている。これは死に至る病なのか。それとも心して養生すればやがてよくなる疾患なのか。正しく診断しなくてはいけない。その全体を見極める主治医こそ不可欠です。殆どの場合直感は真実です。例えばイギリスの自宅の庭で使った農薬が数日後には日本で検出することが出来るのです。(電子捕獲検出器で)この事実は、私達は一つの国や地域で区切られて暮らしているのではないことを、明確に教えてくれます。宇宙開発技術の発達により、ついに私達は地球を俯瞰する事が出来ました。本当は美しい姿です。そしてこの地球が実は人の目に見えないほどのバクテリアやその他の多くの生命によって生きていることも知らねば成りません。人間の文明社会を俯瞰しながらこれを守る為の知恵を企業も一人一人の生活者も考え抜く、人間はそれが出来る存在です。俯瞰と緻密両方必要です。次に「私達は環境問題に取り組む為にさらに何をすればいいか」という質問に答えます。閉鎖的に成らないで欲しいということです。日本は環境に配慮した製品作りはトップレベルであるから、その尖った先をさらに尖らせる方向に走るのではなく、広げる、伝えるという方向に進んで欲しいと願います。環境技術や理念を他の地域や国に生かして欲しい。もっと技術や理論をアピールしてほしい。技術知識を後発の国々が今から1つづつ開発していくには難しい。需要は大きいのです。日本の技術ブランドを世界の市場に送りだして行く方法論を考える時ではないでしょうか。科学者は自分の新しい理論を発表すると、多くの反論と障害に出会います。それを検証する世界の科学者が、様々な理論を発表する。こうして何度も何度も検証され、本当の理論は正しいのか試され続けられます。科学の世界ほどでないにしろ、どのような仕事も反論は避けて通れない、正しい仕事は必ず残ります。大切なのは、自分がどの方向を見つめて進もうとしているか、何の為にという視点が抜け落ちれば、その場しのぎになってしまう。生き残る仕事は必ず反論を乗り越えます。
'04.2.2-2.23朝日新聞.