散歩道<2757>

                             本当に苦しむ死に直面(1)                     (1)〜(3)続く
                 生命の奇跡の重なりの上にある  「神なしの境地」が理想の行き方

 生命科学者として先端の研究に挑みながら難病のため45歳で断念、その後、サイエンスライターとして生命について書き続けていた柳澤桂子さん。近年はこころについての洞察にあふれる著作が目立つ。命の奇跡を、見つめ、死と向き合う思いを聞いた。

・・・・40冊余りの著書のうち、歌集も2冊、近頃、どんな短歌をつくられましたか。
 「正常な呼吸が突然崩れだすこうやって死が近づいていく」「彼岸へと入
(い)りにくき人の苦しみにコスモスの花窓辺をゆらぐ」・・・。去年10月、老人病院に入院した時の歌です。
 同室の女性3人のうち2人が100歳前後で寝たきりでした。一人はほとんど寝ていてガーガーと呼吸音が止まったり聞こえたり。「寒い」「死にたい」くらいしか言えない。もう1人も「アー、アー」としか声が出ないけれど、死にたい気持ちが伝わってきました。
 あんなになっても死ねない。一方で、ぽっくり死ぬ人もいる。死はもっと美しいものだと思っていましたが、死ぬに死ねない人たちと1ヶ月暮らし、本当に苦しむ死を見て、ものすごいものだと実感しました。

'09.1.16.朝日新聞・生命科学者・柳澤 桂子さん

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