散歩道<2754>
opinion・資本主義はどこへ・消費(1)・志向の共同体 求める (1)〜(3)続く
・・・・辻井さんはかって「大衆消費社会から個人消費の時代に移った」と論じ、注目を集めました。70年代から80年代、堤清二としてセゾングループを率いていた頃です。「みんなが同じものを欲しがる社会は終わった」という指摘は、時代の気分を見事に言い当てました。しかし今は、「個人消費の時代は終わった」と考えているそうですね。「『隣がテレビを買った。我が家も欲しい』というのが大衆消費社会です。しかし、『これがなければ生活できない』という絶対的なニーズ(必要性)は日本の場合、20世紀のうちにほぼ満たされました。隣が何を買おうと自分のニーズに合った物しか買わない、というのが個人消費の時代です」
選別の時代に
「その個人消費の時代は、21世紀に入って変化しました。現在は選択的な好みによる需要しか残っていません。一人ひとりのティスト(趣味や志向)が違い、生活パターンが違うためです。私は『選別消費』と呼んでいます」
・・・・しかし、若い層はどうでしょう。上の代はクルマもコートも持っていて満ち足りているでしょうが、新たに大人になった彼らは、買わないといけないのでは。 「そういう人たちがいるから、まだ助かっている面はあります。しかし若者も,以前のように先を争そうように新しいものを買おうとはしなくなった。目新しいデザインだな、買おうかな、でもまだ着られるからいいか、我慢しよう、というわけです。社会全体に広がりつつある消費は消えました」
・・・・不況になる前から、すでに消費は変化していたということですね。政府は不況対策とし個人需要を喚起しようとしていますが、効果は薄そうです。
「最近、マルクスの『資本論』を読み直していますが、『本質的には人間の欲望を満たす行為であった消費が、資本主義社会になってからは労働力の再生産のための消費一辺倒になってしまった』という意味のことが出てきます。趣味もセンスも関係ない、というわけですね。これも奥が深い。マーケッティングのロジックが通用しない現状を言い当てています」
'09.1.12.朝日新聞・詩人・作家・辻井 喬さん
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