散歩道<2736>
世界の変動・危機の中で・米「強欲主義」曲がり角(1) (1)〜(4)続く
1、巨額の報酬の放置、ビジネススクールも反省、2、「勝者は報われて当然、大リーガーのように」、3、新しい経営者像、模索の動き、
1、巨額の報酬の放置、ビジネススクールも反省、
20世紀初めから多くのビジネスリーダーを生み出してきた米国の経営大学院。その最高峰、ハーバード・ビジネススクール(HBS)のジェイ・ロッシュ教授が昨年11月下旬、米メディアのウエブサイト上での論争に火を付けた。同僚と共に、こんな意見を投じたのだ。「ビジネス教育にかかわる者は自問しないといけない。会社がぼろぼろなのに経営者が何百万jをもって立ち去り、社会にツケをまわす風潮にどんな役割を果たしてきたのか、と」
「資本主義の士官学校」ともいわれるHBSの卒業生の4分の1は、危機の震源地ともなった金融界で働く。その一人、スタンレー・オニール氏は07年10月、サブプライムローンを巡る巨額損失の責任を問われ、米大手投資銀行メレルリンチの最高経営責任者(CEO)を辞めた。手にした退職金は1億6千万j(約150億円)会社は米大手銀バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)に買収された。
企業組織論の重鎮でもあるロッシュ教授の「反省」には反論も相次いだ。「どんないい学校も、もともとグリード(強欲)な人は教育できない」「罪を犯した子供の母親を非難するようなものだ」だが、ロッシュ教授はいう。「今回の危機の要因のひとつは金融界の報酬制度だ。我々は資本主義がどのような仕組みで機能しているのか、考えないといけない」昨年9月に経営破綻(はたん)し、世界を危機に突き落とした投資銀行リーマン・ブラザース。その経営暴走の理由について、バンカメのケネス・ルイスCEOは「グリードもあった」と指摘する。リーマンのCEOリチャード・ファルド氏は在任中の00年以降、3億5千万j(約330億円)もの報酬を受け取っていた。純利益42億j(07年度)という高収益がそれを正当化していた。
だが、実態は見返りも大きいが焦げ付くリスクも大きい証券化商品の運用による「荒稼ぎ」だった。金融危機で証券化商品市場は蒸発。甘いリスク管理が裏目に出て巨額の損に押しつぶされた。
企業幹部の交流団体、エグゼクティブ・カウンシルのロバート・ジョンストンCEOは「投資銀行の経営者らは短期のお金を生み出すことに夢中になっていた」と突き放す。
'09.1.9.朝日新聞