散歩道<2707>

                 時の肖像くぐもる年の瀬・ブッシュ・小泉時代の終わりに(1)                  (1)〜(3)続く

 街にクリスマスソングが流れ、イルミネーションがきらめく。いつもながらの歳末風景だが、気のせいか、音の響きも電飾の輝きも内にこもったように感じられる。底の知れない金融危機の津波が世界を覆い続け、国内でも生産の縮小や解雇が広まっている。くぐもりつつ暮れゆく2008年と、21世紀のはじめから続いてきた「ブッシュ・小泉時代」を顧みる。 

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 今月、米国のABCニュースのインタビユの中で、ブッシュ大統領は「最大の痛恨事はイラクの情報の誤りだった」と述べた。来年1月で8年に及ぶ在任期間を振りかぇった言葉だ。そこには、大量の破壊兵器の存在についての「誤った情報」をもとに先制攻撃をかけ、多くの自国民と、更に多くのイラク国民を殺傷したことへの深い省察は感じられなかった。あの戦争を始めたのは「情報」ではない。自らが最高指揮官として判断して開戦に踏み切ったことではなく、「情報」を痛恨事とした。残念なことだが、取り返しのつかない幾多の命に対する畏敬
(いけい)の念の乏しさをうかがわせる。08年とともに、この人や、その周囲が世界を引き回した時代が、とてつもない負の遺産を残して終わる。

'08.12.22.朝日新聞・論説顧問・高橋 郁男氏